脳外科医 竹田くん

あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語

【第112話】新天地での評判

前の病院では「京都の病院では女医ばかりが優遇されて自分は干されていた」と言い、新天地では「古荒が専門医試験の邪魔をした」と言った。


赤池市では巨大な病院組織を相手に知略で互角に戦った。だが、新天地ではそんな事をするほど知恵の回る奴だとは思われていなかった。そこには古荒先生のような寛大な人間はいなかったのだ。


だが竹田くんはそんな事で凹まない。なんとしても都会で一旗揚げるつもりでいた。そこに一通の手紙が届く。その内容は市民病院で起こした医療事故の訴状だった。やばい!ついに来やがった!

【第111話】男の約束 ver.2

地方で問題を起こした医師は最終的に都会に紛れ込む事が多い。とくに大病院では医師の数が多いため、少々変な先生がいても薄まり効果で目立たなくなる。

 

竹田くんは前の職場で上司のパワハラに悩まされた事を伝え、ここではカテーテルをやりたいと希望する。「僕の下で助手をやる事から始めれば良い。」との答えに、男の約束をゲットしたと喜ぶ竹田くん。

 

そこからは過去の繰り返しだが、今度は慎重にやった。だが助手は最初の月の一回のみ。赤池市の地元A社のネット記事が病院内で大問題になり周囲が竹田くんの主執刀に猛反対したのだ。

 

竹田くんは約束が違うと騒いだが、相手にされなかった。竹田くんが本当の才能を発揮するまでそれからさらに2カ月待たなければならなかった。

【第110話】医療事故の件数

何件かの医療事故が起こっていたとは言え、正確な件数さえ知られなければ・・・うやむやに出来たかもしれない。
医療課長・柴井は取材に対応。「医療事故の合計件数ですか?今、調べますね。」

 

第一報は地元新聞社B社によって行われた。続いて、A社が独自取材によりさらに詳細な内容をネットと紙媒体の両方で報道。半年強の間に同一医師が起こした医療事故の件数としてはあまりに異様な数だった。

 

報道内容に驚く院長。医療事故の異常な件数が明るみになった事で・・・個々の事故の内容について様々な疑惑が生じる事となる。医療課長・柴井は「正直に答えすぎたかな~」と頭をかかえる。

 

地元新聞社A社の編集長、この男だけは一連の医療事故が近い将来、大事件になると気づいていた。

一方、都会に舞い戻った竹田くん。新生活が始まろうとしていた・・・

 

更新履歴: 6/13 19:40 4コマ左「竹田くんの新生活が始まろうとしていた」(変更理由:次回の展開の都合上)

【第109話】医療過誤は1件のみ!

市内には竹田くんに関する噂話がすでに出回っていた。
病院幹部からは「人が死ぬから手術禁止」という情報も漏れていた。

 

院長「でも・・彼は今月末で辞めますから!」
地元新聞社A社編集長の鋭い眼光が光る。(同一医師が複数の医療事故だって?)
院長「同一医師により医療事故が何件か起きたのは事実だが・・医療過誤は1件だけです!」
医療事故調査委員会も開かずに、こんな事を口走ってしまった。

 

そもそも検証と呼べるものは、副院長の知人の脊髄専門医に検証依頼した脊髄関連の3件のみ。そのうち2件は最悪の検証結果。
そもそも複数の医療過誤の存在自体が、院長が頑なに竹田くんの手術禁止を解かなかった理由なのだ。

【第108話】語るなかれ聞くなかれ

竹田くんの退職で全ては闇に葬られるはずだった。
「語るなかれ、聞くなかれ」それが赤池村の掟である。
なぜこの特異な物語が世に出たのか?

 

竹田くんが退職する2週間前・・・
病院は経営問題の記者会見を開いた。
地元新聞B社の記者「連続医療事故が経営悪化の原因では?」
院長は愕然とする。「竹田くんの事がバレている・・・」

 

この運命の日・・・
病院は自らの運命を決定づける2つの過ちをおかす事となる・・・。

【第107話】依願退職

竹田くんは市民病院との手術解禁をめぐる戦いに敗れはした。
だが、そこには・・・男らしい面構えになった竹田くんがいた。
「自分の能力を出し切ったのだから、悔いは無い!」
竹田くんは院長に退職を申し出る。
竹田「この病院は辞める事にしました。次の病院にはうまく取りなしてください。」
院長「そうかね、辞めてくれるかね・・・」
院長は内心ほくそえむ。
「彼が辞めれば、被害者も黙る、パワハラ裁判も無くなる!撤退戦は成功!」
・・・全てが院長の思い通りになったかに見えた。

【第106話】心機一転!

「今日から頑張るぞ!」と新生活をスタートする竹田くん。
時期はずれるが院長も同じように新生活へと旅立ってゆくことなる。
赤池市では、まるで何事もなかったように時が流れて行った。
何年もの月日が流れても、脳外チームによって生み出された被害者はその大半が医療事故に自分が遭遇したという事実すら知ることはなかった。(ある出来事が起きるまでは・・・)
そして、今現在も誰一人救われたものはいない。

(つづきは近日更新)

【第105話】傷害罪VS虚偽告訴罪

古荒先生の弁護士は、虚偽告訴に対する逆告訴を行った。
(竹田くん側の刑事告訴の内容の詳細がやっと分かったが、殺人未遂罪ではなく傷害罪での告訴だった。傷害罪であろうと、有罪になった段階でたとえ罰金刑でも懲戒免職は免れないだろう。)

 

脳外チームは、2人が互いを刑事告訴し合う異常事態になった。

検察に呼ばれた古荒先生。「仮に不起訴になった場合、虚偽告訴罪はどうされますか?」と聞かれ「争い事は嫌いなので取り下げます」と答えた。

 

不破弁護士は何も言ってこなくなり、院長は肩をなでおろす。パワハラ裁判はどうやら無さそうだ。数か月後、古荒先生も竹田くんも不起訴になった。

【第104話】虚偽告訴に対する逆告訴の準備

作家ヘッセと心理学者ユングとの交流の様子を記した名著「ヘルメティック・サークル」。高名な心理学者が推薦文を寄せるこの本の作者ミゲール・セラノが、ネオ・ファシズムの極北に位置する秘教的ヒトラー主義(※)の主唱者であるなどと誰が見抜けるだろうか?

 

この世の中に根っからの悪人はいないと信じていた古荒先生は遅すぎたとは言え、ようやく竹田くんが改心してくれる見込みがない事を悟った。

性善説を信条にすれば自然と良い方向に道が開けると思いたかったのだが・・・これ以上の被害者は出してはいけない!

竹田くんから送られてきたこれまでのメールをプリントアウトする。

そこには貝山さんの失敗箇所の執刀医の書き換えを熱望する内容や、階段転落事件の件も伝えていた。その内容を読めば、刑事告訴は手術解禁を迫るために竹田くんが仕組んだものだとわかるはずだ。

 

※秘教的ヒトラー主義とは、ヒトラーヒンドゥー教ヴィシュヌ神の化身(アバター)であるという思想。セラノは大著「アドルフ・ヒトラー 最後のアバター」を「ヘルメティックサークル」が和訳出版される前年に発表している。

 

en.wikipedia.org

 

更新履歴: 6/1 23:05  1コマ目「河合隼雄」について追記

更新履歴: 6/2 10:00  1コマ目 左を修正 ※詰め込みすぎたため

【第103話】師弟の契り

ひとたび師弟の契りを結べば、弟子の生き様を最後まで見守るのが師匠。

 

彼は最初、おっちょこちょいな「困った奴」にすぎなかった。
自由放任状態に置かれた結果、今彼は病院を破壊しようとしている。
この衝動は彼自身のキャリアも破壊してしまうだろう。

 

たとえ彼が地獄に堕ちようとも・・・
上級医たるもの決して部下を見捨ててはならぬ!
彼を正しい道に戻すのが・・・せめてもの罪滅ぼしだ。

古荒先生は苦渋の決断をした!

【第102話】臨戦態勢

パワハラ訴訟対策の臨戦態勢が敷かれた。
竹田くんは休暇後、外来診療への復帰を申し出たが拒否された。
勤務態度も監視され始めた。

 

花房看護部長は疲弊する看護師たちのことが何よりも心配だった。
竹田くんの暴言を録音するためボイスレコーダーを携帯する者も居た。

 

古荒先生の患者に何かあると、
「古荒先生も死亡事故を起こしているのに、なぜ僕だけ手術禁止なんですか?」と騒いだが無視された。

 

山崎先生は看護婦に耳打ちする。「あそこで現場検証やってるよ~」
古荒先生もまた(病院全体から)見捨てられようとしていた。

【第101話】秘密の作戦会議

資格取得に失敗したとは言え、竹田くんはまだ2枚のカードが残っていた。
古荒先生への刑事告訴と院長に対するパワハラ訴訟である。


ところで、院長は、いかにして竹田君を迎え撃ったのか?
古荒先生の事情聴取の1カ月前・・・
院長は、古荒先生が刑事告訴された事実を知る。
「竹田くんは常軌を逸している。」
(次はわたしに対するパワハラ訴訟か。来るなら来い!迎え撃ってやる!)
院長は最終決戦を覚悟した。

 

この時期、病院上層部は秘密の作戦会議を開いている。
そこで話し合われた事はまるで竹田くんに対する悪口合戦だった。
(犯罪者の容疑がかけられている古荒先生を助けるためには何ら活用されなかったこの上層部会議の内容は数年後に発覚する事となる。)

 

虚偽報告書の存在や、事故調査委員会を開けない負い目によって手術解禁を求める法的正当性は、竹田君の側にある。
それを崩すためには、竹田くんの医療過誤事案を独自にリストアップして対抗するしかない!

※あくまで訴訟された場合に備えた防御策として医療過誤事案を秘密裏にリストアップして市の弁護士に渡しておく。

【第100話】背後からの急襲

久しぶりに不破弁護士が来院し、病院幹部との攻防戦を繰り広げた。
「古荒医師によるパワハラは明白であり、手術解禁を要求する!」
「そ、それは・・・」

一方、竹田くんの元には学会事務局から連絡があった。

「・・・年の全手術症例のオンライン報告データと照合不一致があり・・・」
「ちょ、ちょっとそれは単純ミスです!僕じゃなくて、上級医のミスです!」
「受験できないなんてひどいじゃないですか!」

「待ってください!弁護士と相談しますので・・・」
「え?弁護士って関係あります?」

竹田軍は、背後からの急襲に踵を返して反転攻勢に出たが、時すでに遅かった。
(受験資格が無いものはいくら頑張っても無い。)

あと少し、あと少しだった。もう少しで手が届いたのに!
まさかのカテーテル専門医資格、取得失敗!

 

2023/5/28 訂正 一段目右「攻防戦を繰り広げた。」

【第99話】一緒に学ぼうぜ!

2度目の事情聴取も過酷を極めた。なんとか殺意を自白する事は我慢した。


古荒先生はその足で病院に向かい残務をこなした。
(警察のイメージは固まっている。なんとか禁固刑ではなく罰金刑で済まないか?禁固刑なら人生が終わる。)

古荒先生の弁護士は院長や病院幹部に何度も面会を求めたが断られた。一方で彼らは不破弁護士との面会には応じていた。

休暇明けの竹田くんは手術解禁を見越し行動を始めた。
南病棟の看護師たちに向かって「今日の午後、会議室で勉強会を開くんだ。一緒に最新の医療を学ぼうぜ!」と呼びかける。
出席者はゼロだった。「え?」
竹田くんは古荒先生に「ボクはどうも誤解されているみたいなんです。古荒先生が『竹田は本当はいいやつだ』って言ってくれません?」
頼む

 

古荒先生は「え?君に刑事告訴されている僕が?」と驚く。

 

2023/5/27 20:00 訂正箇所:2段目左「一方で院長は不破弁護士との面会に」

【第98話】好意的な和解案

やむ得ず古荒先生も代理人弁護士を立てた。

 

次の事情聴取の日の直前に、竹田くんから電話がかかってきた。
「不破弁護士から伝言があるんです。殺意を持って僕を突き落としたと供述する事を条件に、刑事告訴を取り下げても良いらしいですよ。」
「これが犯罪者にならないラストチャンスです。」

「なぬ?殺意を認めたら告訴取り下げだと!」古荒先生は思った。「彼にしては珍しく好意的な提案ではないか。」
(このような考えに至るほど、この時期の古荒先生は精神的に追い詰められていた。)

 

弁護士に話すと「絶対にダメ!そんな事をすれば、たとえ先方が刑事告訴を取り下げても、逮捕され検察に送致され起訴・有罪は不可避になりますよ!」と猛反対された。

 

病院には前事務局長の聴取内容の開示を求めたが、兵頭事務局長から渡された書類は黒塗りの文書だった。まさに八方ふさがりの状態。病院の古荒先生への対応はさらに過酷を極めてゆく(つづく)。

 

5/26 22:23 修正箇所 2段目 殺人犯→犯罪者