やむ得ず古荒先生も代理人弁護士を立てた。
次の事情聴取の日の直前に、竹田くんから電話がかかってきた。
「不破弁護士から伝言があるんです。殺意を持って僕を突き落としたと供述する事を条件に、刑事告訴を取り下げても良いらしいですよ。」
「これが犯罪者にならないラストチャンスです。」
「なぬ?殺意を認めたら告訴取り下げだと!」古荒先生は思った。「彼にしては珍しく好意的な提案ではないか。」
(このような考えに至るほど、この時期の古荒先生は精神的に追い詰められていた。)
弁護士に話すと「絶対にダメ!そんな事をすれば、たとえ先方が刑事告訴を取り下げても、逮捕され検察に送致され起訴・有罪は不可避になりますよ!」と猛反対された。
病院には前事務局長の聴取内容の開示を求めたが、兵頭事務局長から渡された書類は黒塗りの文書だった。まさに八方ふさがりの状態。病院の古荒先生への対応はさらに過酷を極めてゆく(つづく)。
5/26 22:23 修正箇所 2段目 殺人犯→犯罪者