脳外科医 竹田くん

あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語

【第113話】学会と医局

提訴を受け市民病院では箝口令が敷かれた。
裁判以外の竹田くんの事(他の医療事故や勤務態度など)について何を質問しても、病院の回答は決まっていた。
「訴訟に関わる事なので回答は控えさせていただきます。」
一件の医療事故の訴訟を理由に、他の全ての医療事故や竹田くんの不祥事について説明義務が無くなる魔法の言葉として、マスコミ対応や市議会などあらゆるシーンで多用された。

 

一般市民はそれで煙に巻けるだろうが、学会が大量医療事故の発生をうやむやにするはずはない。なぜならそんな事に加担したら医学の信用が崩壊するからだ。学会は幸い、この時点ではA社の報道に気づいていない。だが、大手メディアが報じれば必ず事件を知るであろう。それはもはや時間の問題だった。

 

メディアで報道されてはじめて事件を知るなど学会から見ればありえない事だ。
誰が見ても大手メディアの報道の前に事実を知らせるべきだったのに、病院上層部はいったい何を考えていたのだろうか?
学会に対してそんな不義理をすれば、(滋賀の某病院の例のように)最悪の場合、大学医局の医師の一斉引き上げが起こりうるのだ。